ブラスフェマスのボスキャラクター「炎による復活者 キルセ」の解説ページです。登場マップや攻略ポイント・関連情報を掲載しているので、ゲーム世界を楽しむ参考にしてください。
ボス名
炎による復活者 キルセ(ほのおによるふっかつしゃ きるせ)
Quirce, El devuelto por las Llamas
概要
「聖禁の壁」のボス。真っ赤なカピロテ覆面をした男で、炎に燃え盛る剣を用いて悔悟者を攻撃してきます。
デオグラシアスによると、キルセはかつて異端の疑いをかけられ、宗教裁判官たちが見守るなか、火刑にかけられました。しかしキルセが焼き尽くされた後、「奇蹟」の力によって灰と燃えさしの中からその身体は復活したというのです。ロザリオの珠「キルセの焦玉」の伝承によると、もともとキルセを焼いた炎は普通のものではなく、「奇蹟」の炎でした。奇蹟の炎は灰の中から復活したキルセを再び包み込み、キルセは焼かれ、また復活することを繰り返したといいます。キルセは炎により死に、復活した者であり、また今も奇蹟の炎に焼かれ続ける贖罪を繰り返しているのです。
キルセを倒すと入手できる「高山の鍵」を使い、リフトで「『焦貌の聖女』修道院」へ渡ると、その先で「ドルフォスの鏡仮面」を入手できます。このアイテムを「大聖堂 屋上」のエレベーターに捧げることで、さらなる上階への探索が可能となります。
攻略のポイント
キルセは炎をまとった剣、および自らの身体から発生させる火柱で悔悟者を焼き尽くそうとしてきます。キルセの攻撃に対しては、パターンごとに適切なガード・回避行動で対処するのが重要です。
キルセが剣を抱えるように突進してくる攻撃、炎をまとって繰り返し突進を仕掛けてくる攻撃は、タイミングを合わせてガードするのがおすすめです。後者の突進は、当初2-3回連続で突進してきますが、キルセの体力を削ると突進回数が増えるので注意しましょう。
キルセが天井に張り付き、剣を投げてくる軌道は、①壁に沿って一周してくる、②ジグザグの軌道で手元に戻ってくるの2種類です。剣を躱せば、キルセの真下でジャンプ上攻撃で1〜2回攻撃することも、祈詞「光のデブラ」で攻撃することもできるチャンスです。
キルセが壁に張り付いて剣を構えた際には、①そのまま剣を一直線に投げてくる、②剣を振るい、火柱を生成してくるの2パターンで攻撃してきます。①はしゃがめば回避でき、②は距離を取って火柱に当たらないようにしましょう。慣れてくれば、壁際まで逃げなくても火柱範囲ギリギリの立ち位置をキープして、即座にキルセに反撃することもできます。
キルセは悔悟者の頭上に瞬間移動し、飛び降りるとともに火柱を発生させる攻撃もしてきます。キルセが頭上に見えたら即座に横方向にスライディング回避するのが対処になりますが、キルセは2〜3回連続して悔悟者を狙ってきます。また、当初は火柱は1本生成される程度ですが、キルセの体力を削ると、キルセを中心に合計5本程度に火柱の範囲が広がります。加えて、悔悟者の頭上に直接出現するパターン、あえて悔悟者から離れた位置に出現するパターンなどを織り交ぜてきます。咄嗟の反応が求められるため難易度が上がりますが、落ち着いて出現位置を判断し、対処するようにしましょう。
元ネタ解説
『ブラスフェマス・アートブック』によると、炎による復活者 キルセは、異端審問で火刑により処刑された異端者を意識してデザインされています。特にキルセが武器とする炎の剣は、炎に焼かれる死刑囚が燃え盛る刃に貫かれる姿を象った彫像からインスピレーションを得ているそうです。
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フランシスコ・デ・ゴヤ《ロス・カプリチョス24番 救いはない》 異端審問で有罪判決を受けた女性を描き、 炎の王冠はこれから火刑に処せられることを暗示しているとされる。 |
中世におけるキリスト教のカトリックやプロテスタント教会は、自分たち「正統」と異なる教えを信仰する人々を、信仰に対する罪を犯した「異端者」として宗教裁判にかけ、処罰することがありました(「魔女狩り」などとも表現されます)。そして、最後まで「異端」である信仰を捨てない者は、火あぶりの刑(火刑)などに処せられてしまいました。火刑で処刑された有名な人物としては、百年戦争で活躍したジャンヌ・ダルク(Juana de Arco, 1412-1431)が挙げられます。
キルセを倒したあとのデオグラシアスのセリフ、「彼は異端の疑いをかけられ、不当にも火刑に処された」という言及から察するに、キルセ自身が本当に「異端」とされる信仰を持っていたかどうかは疑わしいです。聖禁の壁で取得できる収集物「宗教裁判官アシュガンの顎骨」のテキストからも、クヴストディアの異端審問官が不当に拷問を重ねていた可能性は否定できません。
いっぽう、現実の歴史では「異端審問」とひとくちに言っても、それが行われた時代・国によって、異端とされた対象や刑罰の程度など、内実は異なります。また、「スペイン異端審問の黒い伝説」(Leyenda negra de la Inquisición española)という用語が示すように、「異端審問の暴力的な側面のみがプロパガンダとして意図的に誇張され、ある種の空想・神話として作り上げられてしまっている」という指摘もあるようです。
キルセというキャラクターが、異端審問におけるキリスト教世界の負の側面を象徴していると指摘することも可能ではあるでしょうが、ややナイーブなきらいがあることは否めません。安易に「異端審問=悪」という図式を採用してしまうことは、そのとき非難していたはずの「異端審問が人々を悪と決めつけて不当に裁いていた」という行為を自らの手で再現してしまうことに他ならず、まずは足を止めてよくよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。
また、聖遺物「幻罪の織布」を装備すると聖禁の壁の遺体から聴き取れるキルセについての「彼は炎と共にあり、炎は彼と共にあった」というテキストは、デヴィット・リンチ監督の映画作品『Twin Peaks: Fire Walk with Me』(邦題:ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間)へのオマージュとなっているそうです(公式トレーラームービーは下記からどうぞ)。
「Fire Walk with Me」、すなわち「炎とともに歩め」というフレーズですが、ツイン・ピークスの映画においては、物理的な炎というよりは、「ドラッグ」「性の放蕩」などの自らの身を焼き尽くしかねない悪性の象徴として炎というイメージが用いられているようです。
キルセにとっての炎は、生前の彼の命を奪ったものですが、奇蹟により復活した今では敵を焼き尽くす武器となっています。キリスト教の聖人たちの多くがそうであるように、自らの死因となるものを象徴として扱うキルセは、異端者というよりはクヴストディアにおける殉教者・殉教聖人なのかもしれません。炎によって焼かれ、また焼き尽くしながら生と死の境界を行き来する奇蹟の犠牲者を、あるべき姿に戻して「灰は灰に」還すことが、悔悟者が非業の死を遂げた先人へと贈ることのできる手向けなのではないでしょうか。
登場マップ
それではいつかまた、夢の向こう岸で……
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