BlasphemousⅡ(ブラスフェマス2)のキャラクターNPC「蜂蜜の男 ベニーノ」の解説ページです。登場マップや元ネタを掲載しているので、ゲーム世界を楽しむ参考にしてください。
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「では蜂達に 悲しき務めを続けさせるとしましょう」 |
キャラクター名
蜂蜜の男 ベニーノ(BENIGNO)
虚ろなる魂の罪人(Pecador del Alma Hueca)
概要
「茨歌う森」の洞窟の奥にいる、巨大な男性。体から大量の蜂蜜が溢れ出しており、胸から下は蜂蜜の沼に沈み込んでいます。
ベニーノとの初邂逅時には「乙女」の彫像を悔悟者にプレゼントしてくれます。この彫像は装備すると、いずれかのボス敵を倒した際、または雑魚エネミーを一定数倒すことで破壊されてしまいますが、その場合には彼のもとに戻ると、蜂蜜で彫像を修復してくれます。
この彫像の破壊と修復が彼のサブクエストの進行トリガーであり、2〜3度繰り返すと「乙女」の彫像は最終的に「揺るぎなき者」の彫像へと変化します。
ベニーノは、自らを「後悔する罪人」であると称しています。ある日彼は、長い悲しみから解放され、自分の虚ろな体の中に蜂が巣を作る夢を見ました。すると、その夢想に感応した「奇蹟」は現実と夢を区別しないまま、彼を夢と同じ姿へと変貌させてしまったのです。
ベニーノはその罰を受入れ、自らの「虚ろ」の内部で労働する蜜蜂たちの芳醇な蜜と一体化し、あらゆる悲しみからその魂が解き放たれることを望んでいるのです。ぜひゲーム内のサブクエストを進めて、彼のショッキングな変貌をその目で確かめてみてください。
元ネタ
『ブラスフェマス2・アートブック』によると、ベニーノのキャラクター造形には3つの作品・伝承がインスピレーション元となっています。
1つ目は歴史家ホセ・マリア・デ・メナが『セビリアの歴史』(Historia de Sevilla)で取り上げたアンダルシア地方の「蜂蜜のキリスト」の伝説です。ある夏の暑い日に、セビリアのサンフェルナンド墓地にあるアントニオ・スシージョ(Antonio Susillo)作のキリストのブロンズ彫刻の唇から鮮やかな液体が流れ出しました。奇蹟を目の当たりにしていると驚く人々が像を調べると、内部の空洞に蜂が巣を作っており、暑さで蜂蜜が溶けて流れ出ていたことがわかった…というエピソードです。
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サンフェルナンド墓地にあるアントニオ・スシージョ《十字架のキリスト像》 |
聖母マリア像から「涙」が流れ出るなど、聖者の絵画や像から液体が流れる伝説エピソードの類型であると言えるでしょう。特徴的なのは、(それが実際にあったかどうかはさておき)液体の正体が伝説上で語られているという点です。彫像があたかも生きているかのように体液を流すという事象も奇跡的ですが、虚ろであるはずの空洞に蜂が巣を作り、生命が息づいていたというのは印象的なエピソードであり、ベニーノのキャラクターの根幹となる部分を象徴しているのではないでしょうか。
2つ目は、スペイン・セビリアの詩人アントニオ・マチャード(Antonio Machado)の詩『昨夜、眠っているときに』(Anoche cuando dormía)です。この詩のなかに「私の心の中に蜂の巣があり、金色の蜂たちが甘い蜂蜜を作っていた」という一節があり、ベニーノの夢のエピソードに借用されているのでしょう。
上記の動画は、王立スペインアカデミー(La Real Academia Española)チャンネルで投稿されている『昨夜、眠っているときに』(Anoche cuando dormía)の朗読です。演者はスペインの映画俳優・監督であるホセ・ルイス・ゴメス・ガルシア(José Luis Gómez García)で、カンヌ映画祭で最優秀男優賞の受賞歴がある大御所です。原語であるスペイン語で、情緒豊かな詩の言葉に触れ、夢のような恍惚感を味わってみてはいかがでしょうか。
⇑アントニオ・マチャドの詩作品は上記から!
3つ目は、ベニーノの外見に関するインスピレーション元として、フアン・マルティネス・モンタニェース(Juan Martínez Montañés)の彫刻作品がいくつか挙げられているので、本記事でも、セビリア美術館に所蔵された作品の写真を引用し、簡単に紹介します。
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フアン・マルティネス・モンタニェース《グスマンの聖ドミニコ》 |
グスマンの聖ドミニコは、修道会ドミニコ会の創設者として知られる人物です。
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フアン・マルティネス・モンタニェース《聖クリストフォロス》 |
聖クリストフォロスは、見知らぬ子どもを運んで川を渡った際、あまりの重さに驚き、その子に何者かを尋ねたところ、「全世界を肩に負うキリストである」と告げられた伝説が有名です。クリストフォロスとは「キリストを運ぶ者」という意味を持っています。
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フアン・マルティネス・モンタニェース《聖フランシスコ・デ・ボルハ》 |
聖フランシスコ・デ・ボルハは、イエズス会士であり、イエズス会の総長を勤め上げた人物です。ドミニコ、クリストフォロス、ボルハいずれの聖人の像も、精悍な顔立ちと口髭・顎髭がベニーノのデザインと共通していることが見て取れます。また、モンタニェースはブラスフェマス2の「聖彫刻家 モンタネス」の元ネタでもあるので、彼がブラスフェマス2という作品へ与えた影響は計り知れないものがあるようですね。
こうして蜂蜜の男 ベニーノの元ネタに触れてみると、彼がキリストや聖人たちの複合的な要素からなるキャラクターであることがわかります。スペイン・アンダルシア地方の敬虔な宗教文化が、ベニーノというキャラの裡に溶けて混ざり合っているとも言えるのではないでしょうか。
登場マップ
関連キャラ
- 聖彫刻家 モンタネス…ベニーノの元ネタの彫刻を製作した実在の彫刻家をモデルとしている。
それではいつかまた、夢の向こう岸で……
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